アメリカの夜

今から20年ほど前に,「アメリカの夜」という映画撮影技法に関するテレビ番組が深夜に放送されていた。
以下は,その番組「アメリカの夜」のオープニング曲にも使われていたフランス映画「『映画に愛を込めて アメリカの夜』(原題:La Nuit américaine 英題:Day for Night)」の主題曲である。心にしみる良い曲だ。
番組自体がこの映画「アメリカの夜」へのトリビュートとも言うべき内容で,まさに番組スタッフの映画と番組へ愛を込めているのが良く伝わってきた。

さて,番組のアメリカの夜は,俳優宝田明によるタメがあり,良い意味で少し気取った感じの,ユーモアもあるホストによって,映画の技法を,実際の映画での使用例とともに理論的に解説していた。
焦点深度,パン,クレーン,望遠,広角,レンブラントライト,ステディカム,アリフレックス,スローモーションなど,ひとつひとつの技術解説が実に奥が深くなされていた。
当時,若かりし頃の自宅にはビデオデッキがなかった。
大変素晴らしい映像技術解説だと思った僕は,それをできるだけ丁寧にノートに記録することを心がけた。

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記録したノートの一部

番組はどんどん内容を説明していくので,それをすべて記録してはいられない。
そのため,番組中は,キーワードやインデックス,出典映画のクレジット記録にとどめ,目は画面に集中し,殴り書きのようにメモを書いていく。そして,番組終了後にメモと記憶を総動員して,詳細に記録していく。覚えている限りの記憶を記録した。

今思うと,ビデオデッキがなかった事が,このような記録手段をとることとなり,それが記憶につながった。映像の表現の記録なので,映像で記録しておくのがベターなのだろうが,今でもこのノートを読み返すと,紹介されていた映像が脳裏によみがえる。

番組から学んだの内容の一例として,「望遠」を紹介すると,望遠レンズはただ単にズームして撮るという効果だけではただの光学装置でしかない。それを,まっすぐに向かって走ってくる人を遠くからとらえてズームすることで,カメラと背景と人物の相対的な距離感がさほど変わらないので,移動している感じがあえて伝わらない印象を作り出すことができる。そのため,主人公が長い距離を大変くたくたになりながら走っていながらもなかなかたどり着かないもどかしさを映像表現として生み出すことができる,というもの。(出典:「卒業」)
確かに望遠レンズはズームする装置。だが,こうした時系列のある表現ができてこそ機器スペック重視ではない,人間が使う「道具」になり得るのだとハッと気づいた。この感覚にはデジタルとかアナログとか関係ない。
そして,映画表現に限らないなにか大きな感覚の殻がこの時剥けたような気がした。機器のスペック争いに興味がなくなって,それで何を作るのかが大事なのだとも思った。

映画「アメリカの夜」を含めた名作映画50本が全国の映画館で上映されている。
午前十時の映画祭
往年の名作揃いだ。見に行ってみよう。

Category: いろいろ, デザイン, 映像・画像 Comment »


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